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  • イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ5

    2.2.2 ID規則とLP規則

     親とそれが直接支配する娘とからのみ構成される部分木は、ID規則により写し出される。ID規則の担う情報は、親と娘の直接支配関係だけで、部分木の構成要素間の線的順序は、LP規則に委ねられる。こうした情報の二分化は、ドイツ語などに比べてより語順が自由な言語の場合*、従来のPSGでは、一度に一つの規則が述べられるだけで、句構造を全て列挙しなければならなくなるゆえに取られた措置である。* 

    (9)
    PSG A→BCD, B→BDC, B→CD, C→ABD, C→BAD, C→BDA
    GPSG ID規則 A→B, C, D, B→C, D, C→A, B, D LP規則 B<C, B<D

    ID規則は、語彙的と非語彙的に分かれる。前者には、H[n](nは整数)という語彙的主要部が導入され、SUBCATとBARの素性があるが、後者に下位カテゴリー化はない。

    (10)
    1 S→X2, H[SUBJ, -]
    2 NP→Det, N1
    3 N1→H[1]
    4 VP→H[2], NP[ACC]

    (10)の規則は、LP規則(Det<N, V[MC, +]<NP)およびFSD3[INV、-]を伴い(11)の木を認可する。

    (11)   S
        △
    NP[NOM]  VP
    △ △
    Det N1 V[2] NP[ACC]

    花村嘉英(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

  • イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ4

    素性と素性値の対の集合からカテゴリーが構成される。* この対は、素性値指定と呼ばれる。(4)のNPを正確に記すと、それは、次のような素性値指定の集合と考えられる。但し、カテゴリーのNと素性のNを混同してはならない。

    (5)NP=[N, +], [V, -], [BAR, 2], [PLU, -], [PER, 3], [CASE, NOM]]

     カテゴリーには、主要なものと副次的なものとがある。前者は、N、V、A、Pおよびそれらの投射、後者は、Det(限定詞)、CONJ(接続詞)、COMP(補文標識)などで、これらは、BAR素性の値を欠いている。しかし、GPSGでは、BAR指定がなくてもSUBCATが指定されていれば、語彙カテゴリーのメンバーなのである。*

    (6)A=[N, +], [V, -]
    B=[N, +], [PLU, -]
    Unif(A, B) =extension(A) =extension(B)

     (6)は、Unif(A, B)がカテゴリーA、 Bの合成([N, +], [V, -], [PLU, -])を値とする関数で、それがAとBのそれぞれに含まれるすべての素性値指定を拡張したものになるということを表している。カテゴリーA、Bのユニフィケーションとは、A、Bの拡張であり、かつ最小のカテゴリーを求めることである。*
     素性間には、その一定の依存性を表したFCRがある。*

    (7)FCR1 [BAR, 0] =[N]&[V]&[SUBCAT]
    FCR2 [BAR, 1] ⊃~[SUBCAT]
    FCR3 [BAR, 2] ⊃~[SUBCAT]
    FCR4 [NULL, +] ⊃[SLASH]

     FCR1は、あるカテゴリーが[BAR, 0](語彙的主要部)となるには、N、V、SUBCATに関する素性の指定がある時に限るという意味である。FCR2とFCR3は、語彙的主要部の当社が下位カテゴリー化をせず、SUBCATの値を持つことはないといっている。また、FCR4により、NULLから足素性値SLASHが導かれる。NULLは、FFPの説明の際、再び取り上げる。
     素性と素性値が取る通常値を指定するためにFSDがある。*

    (8)FSD1 ~[NULL]
    FSD2 ~[NOM]
    FSD3 [INV, -]

     FSD1とFSD2は、素性[NULL]と素性値[NOM]が有標であることを、FSD3は、限られた場合に等値が起こることを表している。

    花村(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

  • イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ3

     素性は、3種ある。部分木の親と語彙的主要部が等しい値を持つ主要部素性(N、V、PER、BAR、SLASH、INV、VFORM、SUBJなど)、部分木のどの子からも上昇可能な足素性(SLASH、WHなど)そして一つの接点に留まって他に伝わることのない素性(CASE、WHMOR、NULL)とである。CASE、WHMOR(Wh形態)、NULL(音韻的に空)など。*
     素性値には原始的な値とカテゴリー的な値がある。

    (3)PLU+, -
    PRE 1, 2, 3
    CASE NOM, ACC, FEN, DAT
    (4)S NP[[PER, 3], [PLU, -]]
    VP[AGR NP[[PER, 3], [PLU, -]]]

     (3)は、数、人称、格素性がそれぞれ取ることのできる原始的な素性を示し、(4)は、主語と動詞との一致を示す際に用いられるカテゴリー(名詞句で3人称単数)が素性値となる素性AGRを示している。CAPの説明の際に、一致については再び取り上げる。

    花村嘉英(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

  • イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ2

    2 統語論

    2.1 PTQの統語規則

     PTQで採用されている17の規則の多くがカテゴリー文法*に基づく関数適応規則になっており、(1)のように規定されるカテゴリー間を連接していく。*

    (1) 1 e, t∋Cat、2 A, B∈Catならば、A/B, A//B∈Cat
    (2)S1 すべてのカテゴリーに対してBA⊆PA、S2 α∈PIV/IVまたはα∈PIV//IVでβ∈PIVならば、F1(α, β)∈PIV

    (1)では、eが個体を、tが真理値を表すカテゴリーで、A/B、A//BはともにBカテゴリーと結び付いてAカテゴリーを派生する。2種のスラッシュは、統語上の区別のために採用されている。(2)S1は、複合表現を派生する規則ではなく、任意のカテゴリーに関し、そのすべての基本表現がその句の集合に含まれることを説明している。(2)S2は、例えば、動詞句修飾の副詞langsam(IV//IV)がlaufenなどの自動詞(IV=t/e)と結び付いて新たな動詞句を派生する一方、lesenと結びついてversuchen zu lesenのような表現を派生するversuchenのカテゴリーがIV//IVとなることを示している。*
     PTQには話法の助動詞のカテゴリーはない。これは、内包論理の中で演算子として現れる。否定詞も基本表現には含まれず、時制演算子とともに主部と述部を結びつける統語規則の中で導入され、接続詞も文なり句なりを結ぶ統語規則として組み込まれている。さらに、限定詞に関する統語規則の一つとして普通名詞に不定冠詞を加えて名詞句を派生する規則がある。

    花村嘉英(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

  • イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ1 

    1 はじめに

     この論文は、モンタギュー文法(Montague Grammar: MG)*から一般化句構造文法(Generalized Phrase Structure Grammar: GPSG)*そして主要部駆動句構造文法(Head driven Phrase Structure Grammar:HPSG)への理論的な変遷を追いつつ、GPSGやHPSGが採用しているイディオムや修飾語の分析*に対し、モデル理論からの修正を試みる。
     最初に、それぞれの理論の統語規則を考察し、GPSGによるMGの意味論の修正を行い、イディオムに関する内包論理(Intensional Logic: IL)の有意表現に対する指示対象の割り当て方を検討する。
     続いて、GPSGの統語論と意味論を拡張することに成功したHPSGを使用して、イディオムの内部が修飾される例を分析する。形容詞の修飾は、統語的であるが、意味的には副詞のように動詞にかかる。これをHPSGによるイディオムの原理で説明する。また、イディオムが小説に入ったときの扱いについても合わせて検討する。

    花村(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

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  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える9

    A:情報の認知1は①ベースとプロファイル、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    B:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    C:情報の認知1は③他の反応、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    D:情報の認知1は③他の反応、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
    E:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。

    結果

     三浦綾子は、この場面で、聖書を読んで外部から情報を取り込み、釈迦を思い虚無に関する共通の姿を宗教に見出した。そして、虚無の生活からの転機により計画から問題解決に到達している。そのため「虚無と愛情」及び「虚無とうつ」という組が相互に作用する。

    4 まとめ

     三浦綾子の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「道ありき」のLのストーリーをデータベース化し、最後に特定したところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
     この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。 

    参考文献

    日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版 2014
    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社2018
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018  
    花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集 2019 
    三浦綾子 道ありき(青春編2004、結婚編2003、信仰入門編2011)新潮文庫 

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える8

    表3 虚無とうつの認知プロセス
    虚無の生活から転機が訪れる場面

    A 言ってみれば、この世で望める限りの幸福を一心に集めていたわけだ。しかし彼は老人を見て、人間の衰えゆく姿を思い、葬式を見て、人の命の有限なることも思った。そしてある夜ひそかに、王宮も王子の地位も、美しい妻も子も棄てて、一人山の中に入ってしまった。
    情報の認知1 1、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    B つまり釈迦は、今まで自分が幸福だと思っていたものに、むなしさだけを感じ取ってしまったのであろう。電動の書といい、釈迦といい、そのそもそもの初めには虚無があったということに、わたしは宗教というものに共通する一つの姿を見た。 情報の認知1 2、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    C わたし自身、敗戦以来すっかり虚無的になっていたから、この発見はわたしに一つの転機をもたらした。
    情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    D 虚無は、この世のすべてのものを否定するむなしい考え方であり、ついには自分自身をも否定することになるわけだが、そこまで追いつかれた時に、何かが開けるということを、電動の書にわたしは感じた。
    情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    E この伝導の書の終わりにあった、「汝の若き日に、汝の造り主をおぼえよ」の一言は、それ故にひどくわたしの心を打った。それ以来私たちの求道生活は、次第にまじめになっていった。
    情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 1

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)
     
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③条件反射である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)
     
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)
     
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える6

    分析例

    1 聖書を読んで釈迦を思い虚無の生活から転機が訪れる場面。
    2 この小論では、「道ありき」執筆時の三浦綾子の脳の活動を「虚無とうつ」と考えているため、意味3の思考の流れ、虚無のありなしに注目する。
    3 意味1の喜怒哀楽のうち喜楽は、聖書を渡した前川正との愛情につながる。
    4 意味1:①喜②怒③哀④楽、意味2:①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚、意味3:①虚無あり②なし、意味4振舞い:①直示②隠喩③記事なし
    5 疾病脳 虚無でうつ:①ある②なし、健常脳 うつからの回復:①ある②なし

    テキスト共生の公式

    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「虚無と愛情」を作る。
    ステップ2:うつ病の精神症状から「虚無とうつ」という組を作り、解析の組と合わせる。

    A:③哀+①視覚+①虚無あり+①直示という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつあり+うつから回復なしという組と合わせる。
    B:③哀+①視覚+①虚無あり+①直示という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつあり+うつから回復なしという組と合わせる。
    C:①喜+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。 
    D:①喜+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。
    E:④楽+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。

    結果 
    表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より